大判例

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福岡高等裁判所 昭和32年(う)825号 判決

被告人の控訴趣意中量刑不当の点を除いたその余の主張について。

(一) 原判決が、被告人に対し原判示第一事実につき徴役六月、同第二事実につき徴役二年六月にそれぞれ処する旨言渡しながら、右第一、第二の各窃盗の間に確定裁判のあることを説示していないことはまことに所論のとおりである。しかし、原判示第一事実は、昭和三一年九月一三日熊本市本庄町二三一番地平井明方に於て同人所有の置時計一個(時価四五〇円相当)を窃取したものであるのに対し、原判示第二事実は、同月一五日頃から同年一二月二三日頃までの間被告人単独又は他人と共謀の上前後一八六回に亘り別表の通り窃取したというのであって、右のように原判示第一事実を他の犯行より特に区別して原判示冒頭に掲記し、これに対する適用法令として刑法第二三五条第四五条後段第五〇条を示していることからして、容易に昭和三一年九月一三日と同月一五日との間に確定裁判の存在することを看取することができるものといわねばならない。そして本件記録中の被告人の前科調書によれば、被告人は昭和三一年八月三一日熊本簡易裁判所に於て、窃盗罪により懲役一年六月、四年間執行猶予、保護観察に付する旨の裁判を受け、該裁判は同年九月一四日の満了と共に確定したことが明らかであるから、原判示第一の犯行は右確定裁判と刑法第四五条後段の併合罪の関係にあるので、同法第五〇条に従い処断すべきもので原判決が右確定裁判前の犯行とその後の犯行に対しそれぞれ別個の科刑をしているのはまことに正当であつて、法令適用の誤りはない。尚数個の犯罪の中間に確定裁判のあるときこれを判示すべきこと勿論であるが、判示事実並びにその適用法令によつて前記のように容易にこれを看取することができる場合、右確定裁判の日時内容を判文上明示しなかつたからといつて、直ちにこれを以て刑事訴訟法第三七八条第四号に所謂理由不備の場合に該当するものと解すべきではない。従つて論旨は理由がない。

(裁判長裁判官 高原太郎 裁判官 中園原一 裁判官 厚地政信)

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